Terre des Hommes – 地球の詩 – 1. 飛行ルート(1)

Terre des Hommes
地球の詩

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
翻訳: 佐々木健 with ChatGPT

I. 飛行ルート

1926年のことだ。ぼくは、新人操縦士として、後にアエロポスタル、そしてエールフランスとなるラテコエール社に入社し、フランス南部トゥールーズから西アフリカのダカールまで約3670kmの路線を飛ぶ任務についた。

そこで、ぼくは飛行機の操縦を覚えた。ぼくは、仲間たちと同じように栄誉ある郵便飛行の操縦士となる前に、誰もが通る道を経験した。

そう、飛行機のテストフライトや、トゥールーズ=ペルピニャン間200kmの往復、そして格納庫の奥で寒さに震えながら受ける退屈な気象学の授業などだ。

立ちはだかる恐ろしいスペインの山脈の話に恐怖し、ベテラン操縦士たちを憧れの眼差しで見つめていた。

食堂で、ベテラン操縦士らと一緒になるチャンスがあった。彼らはそっけない態度で、近寄り難い雰囲気であったが、広い視野からのアドバイスをくれた。

ある嵐の夜だったと思う、スペインのアリカンテか、北アフリカのカサブランカから遅く帰って来た経験豊富な操縦士が、びしょ濡れの革ジャン姿で入って来た時、仲間のうちの一人が勇気を出してフライトの様子を尋ねると、その短い答えは、ぼくたちを空想の世界に導いてくれた。自然の罠や策略、突然目の前に現れる崖、そして大木を引き抜くほどの竜巻…。闇の竜が谷の入口に立ちはだかり、稲妻の舞が山脈の頂きを煌めかせる。

先輩たちは常に僕らの星だった。でも、時に、我々を導いてくれた偉大な先輩は永遠の星となって、帰って来ることはなかった。

ああそうだ、フランス南部コルビエールで星になったブリーのことを話そう。

そのベテラン操縦士はぼくたちの中に座って、黙って厳かに食事をしていた。そのずんぐりな肩には過酷なフライトの痕跡が見える。その日は、飛行ルート全体が悪天候で、操縦士には山々が泥の中で暴れ回る大砲のように見える、そんな日だった。

ぼくはブリーから目を離せず、思い切って彼に尋ねてみたんだ、空はどうでしたかって。ブリーはぼくの言葉には気づかず、額に皺を寄せたまま黙々と食事を続けていた。

飛行士が悪天候の中で飛ぶ時は、前方を確認するためにオープンコックピットから外に身を乗り出す。すると地上に降りた後も風の音が耳に残り続けることになる。

ようやくぼくの声に気づいたのか、ブリーは顔を上げて、何かを思い出したように突然明るく笑いだした。ぼくはびっくりした。ブリーの笑顔なんて見たことがなかったからだ。

その明るい笑顔は彼の疲れを一瞬のうちに消した。彼は過酷な飛行については何も語らなかった、そして再び俯いて黙って食事を続けた。しかし、この薄暗い食堂の中で、彼のそのずんぐりした肩が、一日のささやかな疲れを癒やすために集まった職員たちの影を消し、神々しい気高さをも感じさせた。

多くを語らない彼の力強い体から、竜を倒した輝ける天使が姿を表したんだ。

朗読・音響効果・編集: 佐々木健

制作の裏側はnote.comで配信

イラスト: @kokorojin x Midjourney

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