文:Ricona ナレーター: 佐々木健
ふと気がつくと
そこはとても広くなっていた
今までキツくてキツくて仕方なかったはずなのに
求めていた以上に広く広くなっていた
立っていた足の感覚が戻ると
眼からは大粒の涙が溢れていた
そして私は
きっと知っているであろう
カーテン越しの向こうに見える影に
ただひたすらに頭を下げていた
何か…
置き忘れてきているような感覚とともに外へ出ると
そこは眩しいほどに晴れていた
世界が一瞬で変わったのかと思うほど
何もかもが不思議に見えた
空を見上げた
雲が浮かんでいた
再び見上げるとそこにはもう
その雲の形はなくなっていた
もしかしたら
必死に求めることなんて
しなくてよかったのかもしれない
ただ深呼吸をして
時に身を任せればいいんだ
それに気がついたあの日の朝は
いまでもずっとわすれない
だから私は今日もこうして生きている
広くなった空き地が
やわらかな芝生でいっぱいになるのを待ちながら